ピンク・フロイド「対(The Division Bell)」をハイレゾで聴く
Division Bell PKG

危うく見過ごすところだった。レッド・ツェッペリンに続いてピンク・フロイドのハイレゾ・ダウンロードが開始されたのだ。7月2日のHDtracksからのメールが無かったら知らないままだったかもしれない。
「独立記念日(インディペンデンス・デイ)セールのお知らせ」-「7月4日の独立記念日まで全商品15%ディスカウント」とある。トップを飾るアメリカ国旗の下に見覚えのあるジャケットがレイアウトされている。石像が対になったデザイン。ひょっとしてこれはピンク・フロイド。クリックしてリンクを開くと間違いなくピンク・フロイド最後のスタジオ作品「The Division Bell」(1994年)だった。
発売20年周年のBoxセット「The Division Bell 20th Deluxe Box / 対(TSUI)」の告知は前から見ていたし、7枚のディスクのうちBlu-ray Discには96kHz/24bitの音源(Stereo及び5.1ch)が含まれる事も知っていた。しかし発売と同時にハイレゾのダウンロードが解禁されるとは思わなかった。ダウンロード販売された音源はBlu-ray Discに収録されるものと異なり、2枚組アナログLPに用いられたダグ・サックス(Mastering Lab)による2014年の新マスタリングが使われている。

Pink Floyd SACD Discs 02
Hybrid SACD「狂気」     Hybrid SACD「炎」

ピンク・フロイドの場合レッド・ツェッペリンと違いハイレゾ商品を全く出さなかったわけではない。EMI時代の2003年には「狂気」、2011年に「炎」がSACDのHybrid盤で出ている。ピンク・フロイドと契約を更新したEMIが2011年から2012年にかけて行った『Why Pink Floyd...?』キャンペーンでは、スタジオ録音14作のCDが入ったボックス・セット”Discovery”の発売と共に、”Immersion Edition”と銘打って「狂気」、「炎」、「ザ・ウォール」をボックス・セットでそれぞれ発売した。「狂気」、「炎」にはアウトテイクスとともに、ステレオ、5.1chミックスのハイレゾ録音が収録されたBlu-ray Discが収められた。
いずれにしてもEMIはトップアーチストの音源はパッケージで販売するという方針を崩さなかった。(2枚のBlu-ray Discに収められたハイレゾ音源の詳細は後述。)
Pink Floyd Discovery Box
Pink Floyd Discovery Box Set (CD X 16)

EMI解体後、Parlophoneがワーナーミュージックに移管され、ハイレゾ音源の取扱いが変わったようだ。ダウンロード・カードが同梱される場合は、同じ内容のファイルを一般販売するという、レッド・ツェッペリンでとられたルールが踏襲されている。
今回音源ファイル(96kHz/24bit)を販売するのは米国のHDtracks(テリトリ制限無し)とドイツのHIGHRESAUDIO(制限有、FLACのみの販売)の2社に限られ、フランスのQoubuzや日本のe-onkyoは含まれていない。

<The Division Bell>
Pink Floyd Three Members
Nick Mason, David Gilmour, Rick Wright
ロックの時代だった20世紀後半のミュージック・シーンを牽引したバンドの頂点の一つがピンク・フロイド。観客動員数、レコード売上げ、何れもレッド・ゼッペリンと肩を並べる。本作は彼等の最後を飾るスタジオ録音。メロディの美しさと共に幻想的な雰囲気、『フロイド史上最も美しいアルバム』といわれたこともある作品。全体的テーマはコミュニケーション。英国議会で投票開始を告げる鐘『the division bell』にインスパイヤーされてタイトルとなった。
1994年に発売され、米英を含む世界各国でチャート第1位獲得し合計1,000万枚を超える売上を記録。収録曲「Marooned(孤立)」はグラミー賞ベスト・ロック・インストゥルメンタル部門を受賞している。ピンク・フロイドにとって初のグラミー受賞作となった。

<録音>
録音のためのセッションは1993年に春にロンドンのイズリントンにある改装なったブリタニア・ロウ・スタジオ(当時ニック・メイソンが所有)で開始された。アドリブからセッションは始まったが、作品の骨格が見え始める頃、録音はギルモアの個人スタジオでもあるアストリアに場所を移した。ミドルセックスのハンプトンのそばを流れるテムズ川に浮かぶ大型ハウスボート(全長90フィート)に設けられたスタジオだ。ちなみに前作「A Momentary Lapse Of Reason(鬱)」もここで録音されている。

Astoria Studio (S)
Astoria Studio
ロジャー・ウォーターズは脱退してしまったが、キーボードのリチャード・ライトが正式メンバーとして復帰、デイヴ・ギルモアを中心に3人のバンド・メンバーが揃っての録音となった。
プロデュースは前作に引き続きボブ・エズリン。1993年9月から12月にかけて録音はロンドンの西の外れチズウィックにあるメトロポリス・スタジオ移る。ミキシングエンジニアとして呼ばれたのは「狂気」のレコーディングに参加して以来のクリス・トーマス。最終工程のマスタリングは米国LAのマスタリング・ラボでダグ・サックとピンク・フロイドの音のお目付役ジェームス・ガスリーの二人の手で行われた。

<ダウンロード>
Division Bell PKG 枠付き(S)
HDtracks(米国)は7月1日(日本時間7月2日)から「The Division Bell」のカウンターを設けた。サンプルレートは96kHz/24bit。この商品に販売地域の制限はかかっていない。日本からストレートにアクセスして購入可能。ただし<Album Only>で曲ごとの分割購入は不可。クーポン適用の15%引きで$16.98。PayPal支払は1,788円だった。
1時間17秒。容量2.33GBが約6分強でダウンロード完了。HDtracksのダウンローダは早いので快適だ。

<インプレッション>
Audirvana Plus & Pink Floyd

実は私のライブラリーに「The Division Bell」は無い。前作「A Momentary Lapse Of Reason(鬱)」でピンク・フロイドのコレクションは終っている。こんなに奇麗な曲が揃っている作品とは思わなかった。癒し系ニューエイジ・ミュージックの心地良ささえ感じるアルバムだ。といってもデイヴ・ギルモアのギターのフレイズはまさにピンク・フロイド。出だしの「Cluster One」から、ハイレゾならではの生ピアノとギターサウンドの豊かな響きに圧倒される。低域の圧倒的な量感を生かしたサウンドはスピーカーで聴いてこそ真価が分かる。ピンク・フロイドの音のお目付役、ダグ・サックスの最新マスタリングの素晴らしさを満喫した。

<ストーム・トーガソン>
Storm Thorgerson
Storm Thorgerson (1944-2013)

2つの顔が相対する印象的なジャケットのアートワーク。2階建てバスの高さの金属製の彫像2基を使ったストーム・トーガソンの作品だ。(現在米国オハイオの美術館が収蔵。)1968年にアート・カレッジで知り合ったピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズの依頼で、セカンド・アルバム「神秘」のジャケット・デザインを手がけたことをきっかけに、トーガソンはアート集団「ヒプノシス」(1968-1983)を結成し、本格的にアルバム・ジャケットのデザインを手がけて行く。1970年代を中心にピンク・フロイド、ジェネシス、レッド・ツェッペリンといった数々のアーティストのアルバム・ジャケットを手掛け、ジャケット・デザインを芸術の域まで高める。光のプリズムを表現した「狂気」のアートワークはロック史に残る名作となった。彼の友人でもあり、イエス、エイジア等のアートワークで有名なロジャー・ディーンと共にロック界に果たした功績は大きい。近年癌と診断され闘病生活を送っていたが、2013年4月18日に他界した。69歳だった。合掌。

<ピンク・フロイドのハイレゾ音源>
これまでEMIが3作品で発売した”Immersion Edition”には「ザ・ウオール」を除く「狂気」と「炎」にBlu-ray Discが含まれ、ピンク・フロイドのリニアPCMのハイレゾ・ミックスが収録されている。高価なものなのでBoxは手を出しにくいが、願わくばダウンロードで販売して欲しい。「対(TSUI)」<20周年記念デラックス・エディション>に含まれるBlu-ray Discのハイレゾ音源もリストに入れた。

■ Immersion Edition:「狂気(The Dark Side of the Moon)」
(Disc 5/ Blu-ray Disc)
「狂気」 5.1 surround sound mix (2003) (96 kHz/24bit)
「狂気」 Stereo Mix (1973) (96 kHz/24bit)
「狂気」 4.0 quadrophonic mix (1973) (96 kHz/24bit)

■ Immersion Edition:「炎(Wish You Were Here)」
(Disc 5/ Blu-ray Disc )
「炎」 5.1 Surround Sound mix (2009) (96 kHz/24bit)
「炎」 4.0 Quadrophonic mix (1975) (96 kHz/24bit)
「炎」 Stereo Mix (1975) (96 kHz/24bit)

■ The Division Bell 「対」20th Deluxe Box
(Disc 7/Blu-ray Disc)
「対」 Andy Jackson 5.1ch Mix (92khz/24bit)
「対」James Guthrie Stereo Mix (92khz/24bit) 
 
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