アップルはハイレゾの夢を見るか
ブレードランナー
                                                 <BLADE RUNNER 1982>
タイトルはお分かりのようにリドリー・スコット監督の映画『ブレード・ランナー』の原作、「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(原題: Do Androids Dream of Electric Sheep? )」(フィリップ・K・ディック著 ハヤカワ文庫SF)をパロッたもの。未来世界(設定は2019年)生き物は馬鹿高い高級嗜好品。夢にまで出てくるロボットの羊を生身の羊に買い替えるため、主人公はアンドロイド(レプリカント)を追って賞金稼ぎ出かける...。
長らくロッシー(非可逆圧縮)で音楽ダウンロード業界に君臨してきた
iTunes Music帝国が、ロスレス(可逆圧縮)かつ、CD超えのハイレゾ音楽配信の恵みを民に与えるのは何時かを占ってみる。
iTune Logo
音楽ブロガーのRobert Hutton氏のブログ記事(3月21日付け)がきっかけでWWDC 2014(アップルが毎年開催している開発者向けイベント)でiOS8/iPhone 6のハイレゾ対応とiTunes Storeのハイレゾ取扱開始が発表されるという予想が広まった。内容は情報筋から聞いた話として「レッド・ツッペリン・リマスター3作が発売される6月頭、iTunes Storeのハイレゾカウンターのスイッチが入る。ツッペリン発売がそのキックオフイベントだ。」というもの。WWDC 2014開催のタイミングがドンピシャだったため既成事実のように扱われ始めた。

6月2日、WWDC 2014でのキーノートスピーチでハイレゾ音源配信や
iOS8のハイレゾ対応の話は無し。iPhone 6を初めとした新機種の発表は一切行われなかった。ツッペリン初期3作が発売されてから1週間経つが、iTunes Storeでハイレゾ販売が開始されたフシはない。ACC256kHzのロッシー・ファイルは通常発売より一足早く5/25には販売されていたのだが。

今のところ「レッド・ツェッペリン 2014リマスター」3作品のハイレゾ・ファイルが購入が可能なのは米国HDtracks(Zepに関してはテリトリー制限無し)及びフランスのQobuz(テリトリー制限有り)と独HIGHRESAUDIO(テリトリー制限有り)の3社。DSD配信が話題の米国Acoustic SoundはCD、LP、Box Setの取扱いのみでダウンロード無し。3作で最も人気が高いのは「Led Zeppelin I(DELUXE EDITION)」(パリ・ライブ同梱)。「Led Zeppelin I(REMASTERED)」が続き、3位は「Led Zeppelin II(DELUXE EDITION)」。この順位は今のところ(6/10現在)米国HDtracksも日本のアマゾン(CD売上のみ)も同じだ。

<高級ヘッドホンのビーツを買収>
ティム・クックとジミー・アイオヴィン(S)
Photo(L→R) Jimmy Iovine, Tim Cook [Apple CEO], Dr. Dre,
Eddy Cue [Apple]

5月29日、WWDC 2014と前後してアップルは自社の将来を左右する重要な発表を行った。かねてから噂されていたBeatsの買収だ。1台数万円の高級ヘッドホンのビーツブランドを擁するBeats Electronicsと、同グループが最近立ち上げた定額制音楽配信サービスのBeats Musicだ。買収額は前者が26億ドル。後者が4億ドルで合計30億ドル(3,000億円)。アップルの歴史の中で最高の投資額である。
アップルはBeatsを独立したブランドとして存続させる。そのヘッドフォン/イヤフォンのデザインと技術を使い、iTunesのハイレゾ音楽をリードしたいのだと憶測されている。

<ジミー・アイオヴィン>
ジミー・アイオヴィン&ジョン・レノン
Jimmy Iovine with John Lennon at Record Plant 1974

買収に伴いBeats共同創業者のドクター・ドレーとジミー・アイオヴィンはアップルに参画する。なおアイオヴィンはユニバーサルミュージック傘下のInterscope-Geffen-A&M Records会長職を退任する。ドクター・ドレーは名前ぐらいしか馴染みがないが、ジミー・アイオヴィンのほうは音楽業界での経歴も長く、生粋の音楽人で業界のトップとして知名度も高い。NYCの録音スタジオRecord Plantのレコードエンジニアとして長いキャリアを持つ。ジョン・レノン、ブルー・スプリングスティーン、U2、トム・ペティー上げれば切りがない。レディー・ガガを手がけた名プロデューサーでもある。なによりもワーナーミュージックの資本を借りてスタートさせたインタースコープ・レコードをユニバーサルグループのトップレーベルに育てた手腕は凄い。
ジミー・アイオヴィンは生前ジョブスと親交が深く当時の5大メジャーがiTunes Storeと契約するのに大きな力になった。当時レコード・レーベルとの交渉、ハリウッドのスタジオとの交渉はスティーブ・ジョブス自らが行っていた。彼亡き後、実質的な交渉は様々な面で停滞していると伝えられる。アップルのティム·クックはジミー·イオバインに Appleのコンテンツ事業やハリウッドメジャーとの交渉を引き継ぐのを早く見たいのだ。

<iTunesミュージックストア大規模リニューアル>

iTnes Musicイメージ2

アップルは2003年にダウンロード型音楽配信「アイチューンズ・ストア」をスタート。携帯音楽プレーヤーやスマートフォンの展開と合わせてCD抜きの音楽文化を定着させたが、ビジネスモデルは曲がり角を迎えている。2013年度iTunesストアの売上は前年比25%増加して伸びているが、iTunesミュージックストアは前年比24%ダウンと大きく減少して全体の足を引っ張っている。
背景にあるのは、音楽のダウンロード販売が前年比6%減と初のマイナスになったこと。また音楽ストリーミングサービスの急成長が市場を席巻しているためだ。米大手のパンドラ・メディアは7千万人の無料会員を擁し、スウェーデン系のスポティファイは全世界で1千万人の有料会員を誇っている。アップルも昨年9月に「アイチューンズ・ラジオ」(ストリーミング配信)を始めたが、存在感は薄い。世界で8億8000万個以上のiTunesアカウントを保有しているアップル。次はどのような手を打つのだろうか。想定されるのは次の3つ。
1) オンデマンド型音楽ストリーミングサービス
スティーブ・ジョブズは生前サブスクリプション型音楽サービスに対し否定的な姿勢を示してきた。現在Beats Musicも傘下。ビジネスモデルを確立したスポティファイは手強い相手だが果たして??

iTunes_Android_Spotify

2) iTunesストアをAndroidプラットフォームにも開放する
AppleにとってAndroidのシェア増大はモバイル領域で絶対に見逃す訳にはいかない。このためにはAndroid版 iTunesの開発と、ロスレスコーデック標準のFLACへの対応を考慮する必要がある。
3)ハイレゾ音源配信への参入
アップルは2012年からはじめた「Mastered For iTunes(MFiT)」でAACエンコーディングの最適化をスローガンに音源提供各社(3大メジャーも含め)から96/24、192/24のマスター(CD用カッティング・マスターの一段前を要請)を集めまくっている。ハイレゾダウンロードのためのマスターの準備はほぼできている。問題はiOS機器(iPhone、iPad、iPod Touch)のハイレゾ対応と各機器のメモリ容量の増量。

<iOS 7ではハイレゾ音源の再生は不可能?>
ONKYO HF Playerなどのサードパーティーのアプリを利用するこで再生だけは可能だがオンボードではハイレゾに対応しない。アウトボードで外部機器(DAC付きポタアンなど)に接続して聴く。接続のためにはUSBカメラアダプタが必要。iOS8ではiOS純正の「ミュージック」がハイレゾに対応する予定。今年秋発売のiPhone 6や新しいiPad、iPad Miniにはオンボードの内部DACで24bitのハイレゾに対応。そのままで視聴が可能になるハズ。

<Lightning Headphones>
Beats ヘッドフォン
アップルは通常の3.5mmmのステレオヘッドフォンジャックの代わりにライトニングコネクターをiOSの機器で使おうとしている。ライトニングコネクターそのものも現行では96kHz/24bitまでの対応となっており、192kHz/24bitに対応できるLightning(C10,C11)後継のLightning (C48)を開発中と言われている。

ライトニングコネクター(改)
Lightning Connector

Made for iPhone (MFi)の新規格ではこれらライトニングヘッドフォンは48kHzのサンプルレートのロスレスデータを受けることになっており、ハイレゾ規格に対するアップルの基準の曖昧さに批判が出ている。
Beatsと足並みが揃えば 3.5mmヘッドフォンジャックにかわるライトニングコネクターのヘッドフォン/イヤフォーンが世界に広まる事も。
アップルがハイレゾに手を染めざるを得ない状況はすぐソコ。あとはいつ始めるかだ。
 
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