ハイレゾで聴くビーチ・ボーイズ Appendix編
Beach Boys Now

これまでに『ハイレゾで聴くビーチ・ボーイズ』と題して
"SMiLE Sessions"(2013/02/26)と
"Pet Sounds"(2013/11/13)の2つをUPした。
読み返してみると若い読者にはチョット説明が不充分と思われる箇所がある。特に最近ビーチ・ボーイズに興味を持った若いリスナー達には。世代的にもLPレコードに馴染みが無く、「モノラルって何?」と言う人がいても不思議はない。歴史的な背景を含めて補足情報をまとめておこうと思う。

<モノラル盤とステレオ盤>
『ステレオと銘打たれたLPレコードやCDはこれまでも出ていたはず。ステレオ化にそんなに拘るのは何故?』という疑問はもっとも。
ビーチ・ボーイズのレコードはビートルズとはだいぶ違って、LP時代にステレオ盤、モノラル盤が複雑に入組んで発売されいてる。公式には、
1st LP「Surfin' Safari」(1962年)がモノラル、2nd LP「Surfin' U.S.A.」(1963年)から7作目にあたる「Beach Boys Concert」(1964年)まではステレオとモノラルの併売。つぎの「The Beach Boys Today!」(1965年)から「Wild Honey」(1967年)までの6作はオリジナル盤はモノラルのみの発売。セールスの都合上レコード会社はステレオ・バージョンのLPも出したが、モノラルに電気処理を施した擬似ステレオ(Capitol Recordsは"Duophonic"と称した)だった。リアル・ステレオ・バージョンはLP時代には発売されたことはなく、CDのリアル・ステレオ・バージョンの発売もつい最近のことだった ー 後述。つづく1968年の「Friends」以降はステレオのみの発売になっている。


Brian Wilson at Studio 2
Brian at Western Recorders during SMiLE Sessions

<モノラルへのこだわり>
ビーチ・ボーイズの人気が絶頂期にあった1965年~1967年の作品(下記)は当時のブライアンの意向によりモノミックスしか作られずリアルステレオは存在しなかった。
・The Beach Boys Today! (1965年)
・Summer Days (And Summer Nights!!) (1965年)
・Beach Boys' Party! (1965年)
・Pet Sounds (1966年)
・Smiley Smile (1967年)
・Wild Honey (1967年)
1960年代を通じて、若者たちがまず聴くのはTop40のAM局。そしてダイナーやハンバーガー・ショップのジュークボックス。個人宅で聴く場合もせいぜい電蓄。モノラルが主流だった。60年代中期は丁度レコーディング機材の変わり目でもあった。マルチレコーダーが3トラック → 4トラック → 8トラックと変わり、本格的なマルチトラック録音への移行時期だった。ビーチ・ボーイズのリーダーであり、プロデューサーでもあったブライアン・ウイルソンはこうした時代背景も意識しながら最終形態をモノラル・ミックス前提で制作を進めていった。もちろん崇拝していたフィル・スペクターの強い影響やモノ・サウンドならではの力強さを求めた事、さらに片耳(右)が不自由であったことも大きな理由としてあげられる。
ブライアン・ウイルソンがモノラル・ミックスに埋めこんでしまった楽器やハーモニーをなるべく録った状態に近いサウンドで聴いてみたいというのはファンの我がままとは言い切れない。丁寧に作られたサウンドと、比べるものの無いコーラス・ハーモニー。モノラルでも長い間人々を魅了し続けて来たのだから・・・。

<用語1:モノラルとステレオ>
・モノラル(Monaural)
『モノ(mono)』は単一の意味。1本のマイクで収音したような、単一の信号だけで再生されるサウンドをモノラルと呼ぶ。かつては1本のスピーカーで再生した。
・ステレオ(2チャンネルステレオ)(Stereo)
『ステレオ』は立体音響の意味。左右2つのスピーカーで音声を再生する方式のこと。2つのスピーカーからはそれぞれ異なる音を出さなければならず、音信号も2種類必要。バイノーラル、サラウンド、多チャンネルステレオもステレオの仲間。
<用語2:リミックスとマスタリング>
・リミックス(Remix)
マルチトラック・テープなどを使い既存楽曲の音素材を再構成したり、様々な加工を加えて、その楽曲の新バージョンを制作すること。ミキシング(mixing)をやり直すことから、mixに「再び」を意味する接頭辞re-が付いた。ちなみに「Pet Sounds」で行われたのはリミックス。「Smile Sessions」ではミキシングそのものが行われた。
・マスタリング(Mastering)
LPのカッテイングマスターやCDプレス用のマスターなどの原盤を作成する事。楽曲ごとの音量差を調整したり、楽曲と楽曲の間の曲間(ポーズ)の長さを調整する作業も含まれる。CDの制作などで、過去の作品をマスタリングの段階からやり直してあらたに作り直す事を「リマスタリング」と呼ぶ事もある。デジタル技術を用いるので「デジタル・リマスタリング」とも呼ぶ。
・ミキシング(Mixing)
マルチトラックをミキシング・コンソールを用いてより少ないトラック(ステレオ2トラック)に移行させる作業。音声トラックのバランス、音色、定位をつくる作業が含まれる。トラック数を少なくするのでトラックダウンとも呼ばれる。
マスタリング以外はアーティスト本人の了解、監修が必要とされる場合が多い。このため過去の作品をCD化する場合にリミックスが行われるケースは滅多に無い、

<ビーチ・ボーイズの過去テープのアーカイブ>
Stack-o-tracks cover photo

CDリイシューを一手に引き受けて来たエンジニアのマーク・リネットとBrother Recordsのアーカイブ担当のアラン・ボイドの二人がビーチ・ボーイズの過去テープの発掘と管理を行ってきている。アランによれば、1964年の「All Summer Long」以降のマルチトラック・テープが殆ど揃っていると言う。積極的にテープ探しが続けられ、2009年には45年ぶりに「Shut Down Volume 2」(1964年)のマルチトラックの未発見部分が発掘され、「Don’t Worry Baby」などがリアル・ステレオ化される目処がたったという。テープの総数は膨大なもので「Good Vibrations」だけでマルチテープが75本有るというからすごい。

<どれを買うべきか>
アマゾンに行って、ビーチ・ボーイズで検索をかけると数えきれない程のアルバムが登場する。
熱心なファンではないので、うんちくは傾けられないが、発売日が新しければ新しい程外れを引く可能性は低い。少なくとも2003年以降のリリースを選択する事をお勧めする。
2012年にビーチ・ボーイズ再来日に合わせ、日本先行で主要12作品のモノ&ステレオのカップリングでCDが発売された(2作品はステレオのみ)。これまでのマーク・リネットのステレオミックスのための地道な作業が実ったリリースなのでこれは一押し。
1.『サーフィン・USA』(モノ&ステレオ)
2.『サーファー・ガール』(モノ&ステレオ)
3.『リトル・デュース・クーペ』(モノ&ステレオ)
4.『シャット・ダウン Vol.2』(モノ&ステレオ)
5.『オール・サマー・ロング』(モノ&ステレオ)
6.『トゥデイ』(モノ&ステレオ)
7.『サマー・デイズ』(モノ&ステレオ)
8.『パーティ』(モノ&ステレオ)
9.『ペット・サウンズ』(モノ&ステレオ)
10.『スマイリー・スマイル』(モノ&ステレオ)
11.『サンフラワー』(ステレオ)
12.『サーフズ・アップ』(ステレオ)
ベスト盤もチョット高いけど日本盤の「グレイテスト・ヒッツ~偉大なる50年」が安全パイかな。新しいベスト盤が別に出たらそれでもOK。選曲の良し悪しまでは考慮していないので念のため。

Summer Days cover photo
 



関連記事
スポンサーサイト

<< 『New York』をテーマにプレイリストを作る | ホーム | ハイレゾで聴くビーチ・ボーイズ "Pet Sounds" >>

comment

post a comment

url:
コメント:
パスワード:
非公開コメント: 管理者にだけ表示を許可する
 

trackback


この記事にtrackbackする(FC2ブログユーザー)