RME「FireFace UCX」がやってきた(2)
UCX image02

仕事柄レコーディングスタジオやマスタリングルームに出入していたので、RMEのラックマウントの機器やApogee、LYNXのオーディオインターフェースにはなじみがあった。自宅でDACがわりに1UサイズのBEHRINGER SRC2496を購入した時も特に違和感はなかった。
FireFace UCXは1Uの上級機UFXと同様、USBとFireWire(IEEE 1394)のどちらにも対応する。USBポート2つのMacBook Proとの接続にFireWireが使えるのは魅力だ。さらにFW接続時はバスパワー駆動が可能。ということはACアダプター無しで動く。1Fのオーディオ・システムにつないで使うにはもってこいの可搬マシーンだ。

<FireFace UCXとUC>
Fireface UCX & UC 2
FireFace UC(上) & FireFace UCX(下)
同社のFireface UCとの違いを説明するのはなかなか難しい。外見上はフロントパネルのロータリーエンコーダー・ノブが黒か灰色かの違いくらいだ。FireWire 400とリモコン用のポートが追加されたため、リアパネルはUCXのほうが少し混み合っている。見掛けはあまり変わらないが、UCXにはフラッグシップのUFXに備わったAuto Set(デジタル・ゲイン制御)などの高度な機能が引き継がれている。ハーフサイズにもかかわらず、1UフルサイズのUFXと同様、もう1基のDSP(音声や画像などの処理に特化したマイクロプロセッサ)が追加され、TotalMixミキサーの機能を大幅に拡張している。小さなボディとは裏腹に、大型デジタル・コンソールに匹敵する美味しい機能が沢山搭載されている。聴き専の私にはもったいない機材だ。

1F Audio Sys and UCX

<Impression>
非常にクリアで解像度の高い音に聴こえる。個人的にはとても好きな音だ。基本的にタイトな低域が好きで、フラットで味付けのない音が好きならUCXはおすすめ。
ざわざわしたノイズが殆どなく、再生音のバックグラウンドが極めて静寂。60年代半ばに録られた音源を再生してみると、テープサチュレーションを効果的に使う、テープリミッター技法(?)まで聴き分けられる。エコーのかけ具合やその響きが減衰していく様子も良くわかって面白い。Steady Clock(ジッター抑制技術)と、電気ノイズを防ぐ為に50以上のシールドを施してS/Nを向上させた効果なのだろうか。ヘッドフォン端子もAKG K701をつないでなんの不満も無い。BEHRINGER SRC2496より1ランク上の音だ。
PowerBook Pro 2.8GHz Intel Core i7 OS 10.7.5
iTune 11.1 + Audirvana Plus 1.5.9

<Hammerfall Audio Core>
MacやPCと機器との接続に普通はUSBやFireWireの端子を利用する。どちらも必ずしもオーディオに都合の良い技術規格ではない。たとえばUSBは「Universal Sireal Bus」という名前からも分かるように汎用型のSerial Busにすぎない。オーディオ用に使うにはそれなりの技術が必要となる。
RMEでは早くから接続ドライバの自主開発に取り組んできた。オーディオ用の汎用チップを利用しようとすると多チャンネルに対応しなかったり、バグや互換性に問題があったり、DACやADCに対するクォリティが十分でなかったり。
2000年代半ばに発売したFireFace800は、DTMでは主流のFireWireを搭載した製品。RMEが自主開発した接続用ドライバーは、オーディオ伝送の安定性で最高のパフォーマンスを発揮し大成功を収めた。そのFireFace800でさえも一時チップ問題で、Appleのコンピュータとの接続で危ない目にあっている。この出来事以来、RMEは転送回路に汎用チップを用いず、独自にプログラミング可能なLSIであるFPGA(Field Programmable Gate Array)を搭載。ここにUSB機能、FireWire機能を実装している。これらの技術全体をRMEではHammerfall Audio Coreと呼んでいる。《この項はSynthax Japanのサイトの”RMEDeveloperStory|MatthiasCarstens”を参考にした。》
FPGA
FPGA

<USB 2.0>
FireFace UCXはPC用とMac用で異なるファームウェアを採用している。これはFPGA上でUSBを実装させることで初めて可能になった。結果としてWindowsでは「割り込み(Interrupt)伝送」、Macでは「アイソクロナス(isochronous)伝送」が使われる。ちなみにアイソクロナス伝送とは負荷が高い状態でも特定の通信に対して一定の転送量を確保する方式。音声や動画の再生などに用いられる。最適化した回路を別々に作ったためMacでもPCでも最適なパフォーマンスを発揮できる。
FPGA上にプログラムを実装しているアドバンテージは、OSのアップデートなどによるPC側の仕様変更にも柔軟に対応できること。通常は返送して修理が必要な問題の発生に対しても、ファームウェアアップデートによって対応させることができる。ドライバーのアップデートが頻繁なのもその証。製品のライフが長くなるのも大きなメリットだ。前述のFireFace800は進歩の速いこの世界で、なんと現役8年目を迎えている。

<CCモード>
正式には「クラス・コンプライアント・モード」という。頭にUSBを付けていうのが本当。「ドライバ不要で接続可能なUSBオーディオデバイス」の意。専用のドライバをインストールせずに使えるということを示す。オーディオインターフェイスやMIDIの世界に限って使われている。
Fireface UCXにはあらかじめCCモード用のファームウェアが搭載されており、発売時に「iPadで使えるただ一つのプロフェッショナル・オーディオインターフェイス」として話題になった。(現在はBabyfaceやUFXもファームウェアアップデートでCCモード対応可能になった)。
ただし実際に使えるのはMac OSX10.5以降とiOS 6以降がのったiPad、iPad 2に限られる。
クラス・コンプライアントには
・USB Class Audio 1.0(上限24bit/96kHz)
・USB Class Audio 2.0(上限24bit/192kHz)
という2つの規格が存在。Fireface UCXが対応しているのは2.0。OS標準ドライバでこれに対応しているのはMac OS Xのみ。Windowsは未対応なのだ。
CC mode and MIDI
CCモードとAudio MIDI設定画面

<Audirvana Plusのインテジャーモード>
Audirvana Plusのインテジャー(integer)モードはRMEの正規USBドライバでソフトが動作している場合は働かず、パネル上に「INT」の文字は表示されない。OS Xの標準ドライバを使うCCモードならインテジャーモードが使える。ただし上限24bit/96kまでの帯域制限となる。
CCモードへの切り換えはUCX本体のフロントパネルのロータリーエンコーダー・ノブを使って行う。詳しくはこちらを参照。
CCmode_UCX

はたしてAudirvana Plusのインテジャーモードは・・・。Direct Mode+integer modeが有効になった証に表示窓にINTが表示された。出音はどうかというと??? 元気いっぱいの音が広がる。Audirvana Plusが得意とする静寂さが影を潜めてしまったイメージ。RMEの正規USBドライバがいかにFireFace UCXの出音までコントロールしているかが分かる。UCX本来の性能をフルに発揮するためにはデバイスの性能を最大限に引き出すためのオフィシャルドライバが不可欠だと思う。なおレコーディングで機能をフルに使用する時はCCモードをOFFにしてFireFace専用のドライバ(TotalMix FX)を使用する必要がある。
integer mode
Audirvana Plus「INT」画面表示

<TotalMix FX >
Total Mix icon 2
Firefaceシリーズを語る上で非常に重要になってくるのがTotalMix FXの存在だ。
これはドライバとしてインストールされるミキサーであり、FireFaceシリーズ内部のミキサー機能をコントロールするソフトでもある。USB接続用のドライバとFireWire接続用のドライバは別々に用意されており、両方のドライバをインストールすることも可能。どちらで接続してもMacまたはWindowsからは入出力が見える。

<オーディオ・システムへの接続と入出力>
Fireface UCX top
リスニング主体のPCオーディオユーザーにとっては、TotalMix FXは難解な物という印象はぬぐえない。リスニングで使用するだけなら必要な操作は多くはない。第2グループの再生のメーター(Software Playback)が振れているかをまずチェック。第3グループの再生のメーター(Hardware Outputs)と「Control Room」の2つのメーターの振れをチェックすれば出力端子まで信号が届いているかが分かる。
UCXはリアパネルのアナログ出力が6口ある。戸惑うのは、一般のオーディオ機器のようなL、Rの表示がないこと。あるのは番号だけ。ステレオ(L/R 2ch)の場合はアナログ出力の1番と2番を使う。左(L)が1番、右(R)を2番にするのが原則だ。
アナログ出力は一見アンバランスのフォン端子に見えるが、TRSバランス出力。我が家のDenon PMA-S1は本格的なバランス入力を持っているのでTRS-XLR変換ケーブルに位相反転アダプターをかませてバランス接続した。バランス出力は2番(ピン)がHOTなのでDENONやアキュフェーズなど3番HOTのアンプを使用する場合は位相を合わせる必要がある。なおUCXのTotalMixで逆位相の出力設定も可能だ。

<A/D D/A devices>
RMEではBabyfaceからフラッグシップのFireFace UFXまで、グレードによる音質の差はないという。基本的にはどのモデルも同等の性能で設計され、入出力端子の数や形状、機能の有無などが製品の差となる。たとえばBabyfaceはコンパクト版で性能を落とさずチャンネル数を少なくしたモデル。設計時期や採用された回路・パーツ等が異なるため、音質という意味での「性能」は同等でも「キャラクターの違い」はかなりある。下記はRME製品を中心にネットから拾い上げたアナログ←→デジタル変換用の部品情報。入力、出力のアナログの音の傾向(キャラクターの違い)がある程度つかめる。たとえばBabyfaceのD/AチップはフラッグシップFireFace UFXと同じバーブラウンPCM4104。流行のPCM1795ではなく、6年以上前だが評判のチップ。コンパクトだが音が良いという人気はこれで裏付けられる。ちなみにRMEのロングセラーモデルFireFace 800が使うAK4396はプロ・オーディオでは極めて評価が高い旭化成の現役DA/ADの最高級品。100万円越えの各国の高級DACに多数採用されている。
<maker/model/devices>
RME ADI-2: A/D AK5385, D/A AK4395
RME ADI-8: A/D AK5392, D/A AD1852
RME ADI-8 DS: A/D AK5393A, D/A AD1852
RME Multiface I: A/D D/A AK4528VF
RME Multiface II: A/D AK5383, D/A (NA)
RME HDSP 9632: A/D AK5385A, D/A AD1852
RME HDSPe AIO: A/D CS5361, D/A AD1852
RME FIREFACE 800: A/D AK5385, D/A AK4395 (AK4396)
RME FIREFACE 400: A/D D/A AK4620A
RME FIREFACE UFX: A/D CS5368, D/A PCM4104
RME FIREFACE UCX: A/D D/A AK4621EF
RME BABYFACE: A/D AK5385, D/A PCM4104
-------------------------------------------------
APOGEE Ensemble: AD/DA DA/AD CS4272
APOGEE DUET: AD/DA DA/AD CS4272
LYNX Aurora 8: AD/DA CS5381, DA/AD CS4398
BEHRINGER SRC2496: AD/DA AK5393, DA/AD AK4393
<Prefix> AK:旭化成エレクトロニックス、CS:シーラスロジック、
PCM:TI/バーブラウン、AD:アナログディバイス
《リスト参照: http://www.gearslutz.com より》

<都市伝説>
単なる都市伝説の1つかと思ってうけ流して来たが、どうやらUSBケーブルによる音の違いほんとうにあるようだ。UCXの場合MacBook ProよりWindowsのNote PC(Win 8 64bit)をつなぐ時その違いはより明確になる。泥沼に入らないように気を付けなくては。 
 
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