ハイレゾで聴くビーチ・ボーイズ "SMiLE Sessions"
Beach Boys Smile Session 1966
The Beach Boys during the Smile Sessions 1966

ビーチ・ボーイズ"SMiLE Sessions"(88kHz/24bit)を購入した。もし完成していたらビートルズの「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」をしのぐ存在になったと言われている作品。44年の時を経て2011年11月公式発売された。あくまでも録音セッションを纏めた作品であって『SMiLE』の完成品ではない。
『SMiLE』のレコーディングは従来のポップ・ソングの形態とは異なり、様々なバリエーションの短いパーツを録り、それをテープ編集で組み合わせて一つの曲にするという「コラージュ的な」手法がとられた。結果的にひとつの形にまとめきれなかったため悲劇となった。(指揮をとったブライアンは失意とドラッグの過剰摂取で重度の引蘢もりになってしまう。)ちなみに録音中止となって数ヶ月後に楽曲の一部を再録して発売されたのが『Smiley Smile』だ。
キャピトル・レコードには膨大な量のマルチトラック・テープ(ほとんどは8-trackの1インチテープ)が残された。

Brian Wilson
Brian Wilson 2004年
・単なる発売中止ではないので完成した状態(完パケ)のマスター・テープは存在しない。
・制作途中での中止のためヴォーカル・パートも不完全、曲を構成するパーツも殆ど未編集。
・手探り状態で試行錯誤を続けていたため、『スマイル』の完成図を描けないまま放棄された。
現存メンバーのブライアン・ウイルソン、マイク・ラブ、アル・ジャーディンは150時間を超えるテープの断片を聴きくことから始めた。
中心となったエンジニアはマーク・リネット(Mark Linett)。ビーチ・ボーイズのCDのリマスタリングを一手に担い、「ペット・サウンド」のDVD-Audio(2003年発売)の5.1chミックスとステレオ・ミックスも手がけたフリーエンジニアだ。
制作にあたり、現存する全ての多チャンネル・マルチマスターをデジタル変換して、一旦コンピューターのハード・ディスクに移し替え、楽器やヴォーカル、コーラスなどの様々な断片を組合せ、バラバラになっているトラックをカット&ペースト作業で編集。最後はモノラルでミキシング(ボーナス・トラック等にはステレオ・ミックスあり)を行う。それを最終的にブライアンがチェックするというスタイルが取られた。
デジタル編集には2003年発売の「ペット・サウンド」DVD-Audio(24bit/96KHZで収録)の制作で使用されたハイクオリティDAWシステム Apogee NativeToolsが用いられた。
<Native Toolsの構成>
16 channel Apogee 24/88.2/96 AD-16 converter
16 channel Apogee 24/88.2/96 DA-16 converter
Steinberg's Nuendo DAW software for Mac
RME 9652 PCI interface card
DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)にはDigiDesign社のPro Toolsが使われる事が多いが、Native Toolsには独スタインバーグ社のNuendoが組み合わされている。発売がCDのため、取込みのApogee AD-16のサンプリング周波数は88.2kHzに設定された。(88.2kHz x 1/2=44.1kHz)。CDは16bitでサンプリング周波数を半分に落してしまうが、ダウンロードでは24bit/88.2kHzをストレートに享受出来る。変換が入らないのできわめて高品位な音源となる。
一般にデジタルでマスタリングやリミックスする場合、録音時のマルチトラックテープにまで遡って作業が行われる事はまず無い。しかも録音を指揮した本人(プロデューサー/ミュージシャン)立ち会いの上で作業が行われる。ほとんど奇跡に近いような状況で生まれた音源なのだ。

qobuz logo

フランスの配信サイトQobuzでファイルを購入した。16bit/44.1kHzのCDクオリティに限って言えば、タイトルの充実度はQobuzがダントツ。2013年に入ってからは24Bitハイレゾ配信を積極的におこなっている。当然DRMフリーでMacユーザーに優しいAIFFやALAC(アップルロスレス)のファイルがダウンロードできる。HDtracks以外を試してみたかったのと、Qobuzの方が「Smaile Sessions」の価格が安かったこともある。
【ダウンロード】
AIFFではなく、ALAC(アップルロスレス)でファイルを落とす事に決めた。「Smile Sessions」はCDの2枚組で収録時間が2時間21分。リニアPCMだと4.6GBぐらいの容量となる。米国のように日本との間に太いバックボーンが走っていない欧州では速度を考えるとやむおえない。ロスレスは手持ちシステムのHDDや本体メモリーへのロードにもやさしい。ALACの使い勝手やリニアPCMと音の違いが無いかどうかのチェックもやってみたかった。
画面表示がフランス語なので焦らないように次の3つの単語は頭に入れておくこと。
"PANIER": Cart
"TÉLÉCHARGER": Download
"ECOUTE": Listen
テリトリー制限があって、商品がカートに入らないのは分かっていたので、カーペンターズでもお世話になったTor(トーア)を使う。決済が終るとダウンローダーを落とす画面が表示され、ここで購入するファイル形式を確認する。どうやらALACがお薦めのようで最初にALACが表示される。Torを終了させてからダウンローダーを立ち上げる。平日の夜8時頃だが2.87GBのファイルで61分31秒かかった。ダウンローダー内部での圧縮・解凍は無いようだ。米国のHDtracksはカーペンターズの2.67GBのファイルが13分42秒で完了したのでQobuzは5倍近くかかっている。

【ハイレゾ音源(4)】
Smile Sessions PKG

タイトル:Smile Sessions
アーチスト:The Beach Boys
フォーマット: ALAC (88kHz/24bit AIFF)
全40曲 収録時間2時間20分59秒 2.87GB
価格: €17.39 EUR
古き良きハリウッド映画を見ているような、オリンピックの開会式にでも出てくるようなイマジネイティブな音楽絵巻がひろがる。Beach Boysにしか出せないハーモニーもあって暖かな気持ちになる。唯一「Good Vibrations」のみが「Pet Sounds」直後に作られ、ブライアンの納得する型で完成している。それ以外はどこまでが完成形なのか誰にも(ブライアン本人にも)分からない。オリジナルのマルチトラックから作られた音は40年以上前の録音とは思えない。まるで現代の録音のような生生しさ。万人向けとは言えないが、ハイレゾに興味がある人にはぜひ味わって欲しい世界だ。
 
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