英国の音 リバプールとビートルズ・ミュージアム
リバプール

1983年から84年にかけて仕事で何度かマンチェスターを訪れた。
すでに故人となっている地元ロック・バンドのマネージャーだったグレットン氏から、隣町リバプールで開催されているビートルズ・ミュージアムを見に行かないかと誘われた。マージー川の河口に開けたリバプールまで50Km。マンチェスターからは車で45分だ。日曜日の午後にリバプールに向かう。さびれたかけたリバプールの中心街のはずれに設けられた黄色のテント地の建物がそうだった。(現在アルバート・ドックに開設されている「ビートルズ・ストーリー」とは全く別の催事。
1985年にこのミュージアムはアメリカ各地を回るためにリバプールから移転してしまう。)
迷路風の通路で繋げられた時代を追っての展示は、2階建ての高さを生かした、迫力のあるものだった。1973年に閉店してしまったオリジナル「キャヴァーン・クラブ」を再現したアトラクションももちろんお約束通り。ポールがリバプールとロンドンの間を何度も往復したという伝説のMiniの展示もあった。ジョンとヨーコの等身大のヌード写真が飾ってあったのはご愛嬌。
さて本題だが、このミュージアムの目玉はビートルズがほとんどの録音をした、EMI第二スタジオ(現アビーロード・スタジオ)のコントロールルームを忠実に再現した部屋だった。コンソールとモニターは当時の実機だと解説には書いてあった。SSLやNeveの新しい調整卓を見慣れている目には随分古い機材だなという感想しかなかったが、もっと目に焼き付けてくれば良かったと後悔している。

EMI 2nd Studio and console

写真でビートルズが前にしているのが、展示されていたEMI Redd 37。EMIの自作コンソールで各国のEMIスタジオにも同じものが配備された。もう一つの写真は第二スタジオでシラ・ブラック(同じリバプール出身の女性歌手)が技師とRedd 37を前にEQの打ち合わせをしている風景。彼女の後ろにあるモニターはアルテックの銀箱612Aエンクロージャーが写っている。中身は605E(604Eではない)。この組み合わせが当時のEMIの標準モニター。
記録によるとRedd 37は1968年までEMIスタジオで使われた後、同スタジオの技師リチャード・ハケットに売却され、同氏が1981年に独に転出する際に米国の録音機材の業者に売却されたとある。その業者がミュージアムを運営する会社に売却したと思われる。米国を巡業した後、このRedd 37はどうなったのだろう。
さてEMIスタジオは1968年に入ると機材の入れ替えを開始し、同年12月にはEMI Research Laboratories製造のTG12345コンソールを導入。ビートルズの「アビーロード」が最初の作品だという。TG12345は16chのマルチレコーダに対応した真空管を使わないソリッドステートの調整卓だった。1971年には60年代後半のEMI標準モニターだったアルテック銀箱入り605Eは発売間もないJBLの4420に替わっている。
ビートルズの「Let It Be」、「Abby Road」を切り替え直後のEMIの設備で録り、ピンク・フロイドの「Dark Side of The Moon」、「Wish You Are Here」ではTG12345のマーク4に入れ替わったEMIの新しいスタジオ設備で仕事したアラン・パーソンズは機材の移り変わりをどのように受け止めたのだろうか。70年代が終わるとEMIはコンソールの自社開発を止めNeveの製品を主に使うようになる。

【EMI Recording Studios】
1931年、ロンドン北部 アビイ・ロードにあった邸宅がグラモフォン社(英HMV社)によって購入され、スタジオに改築された。グラモフォン社は英国コロムビア・レコードと合併しEMIとなり、スタジオはその後1970年代にアビイ・ロード・スタジオと改名するまで、EMI Recording Studios(at Abby Road)という名称だった。
広い第一スタジオは主にオーケストラやオペラなどの収録に、中間の第二スタジオは軽音楽等に。小さな第三スタジオは追加録音やミックスダウンに使われた。特に第二スタジオは1958年にクリフ・リチャードとシャドウズが録音で使いはじめてからポピュラー録音が中心となった。
1960年代初期から中期にかけてビートルズと、クリフ・リチャードとシャドウズは共同オーナーのようになり、録音スケジュールの調整を重ねた。1969年、ビートルズがスタジオの前の通りに因んでLP『アビイ・ロード』を発表。それ以後「アビイ・ロード・スタジオ」と呼ばれるようになり、後に正式にAbbey Road Studiosと改名された。

EMI Recording Studios

ちなみにポール・マッカートニーはビートルズを離れた後、慣れて使い勝手の分かっている第二スタジオを、そっくりそのまま自宅(MPLのオフィスの地下)に再現して使用している。
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comment

605E?

ALTEC 605シリーズに、Eは無いと思います。
AかBですね。
自宅で605Bを銀箱で使ってます。以前は604Eを使ってましたが、605Bの方が聴きやすくて好きです。

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