英国の音 Original B&W 801
B&W801

CDの発売(1982年)に先駆けてデジダル録音(PCM録音)が始まると、モニタースピーカーの世界も様変わりし始める。JBLを代表とする米国製スピーカの牙城、それもモニタースピーカーで突き崩したのが英国のB&Wだった。
クラシックは早くから次代のレパートリー(曲目)の収録をデジタル録音で開始していた。問題の一つはその音を評価するスピーカーだった。初期のPCM録音は超高域の処理が苦手で、不要な帯域の高音を上手くコントロールするのが難題だった。アナログならレベルが高過ぎる場合はテープが自動的に飽和して潰れた音になり、一種のリミッター効果が働く。デジタル録音にはそれが無く、減衰されないまま、超高音が再生された場合は機器や人間の耳に障害を起こしかねない。
広帯域で位相特性に優れて、そんな異常な音をチェックできるモニタースピーカーとして注目を浴びたのが英国Bowers & Wilkins社の801。ダイナミックレンジの広い音にもレスポンス良く追従するスピーカーでもあった。テープノイズという物が無いデジタル録音は、アンプの残留ノイズが顔を出すような極小レベルから、コーン紙が破けかねない極大レベルまで易々と録音・再生してしまう。
ある程度の音量なら高域から低音まで見事に再生するJBLモニターも小音量にはからっきし弱い。小音量ではウーハーの受け持ち帯域が追従せず、低域の欠けた音になることが往々にしてある。これに対してB&W 801は小音量から大音量まで滑らかに追従してくれる。同じ38cmウーハーにもかかわらず耐久性と応答性がピカイチのケブラーコーンに軍配があがった。


英国南部の港町ワーシングでB&W Electronicsが設立されたのは1966年。John BowersとRay Wilkinsが共同経営する電気店Bowers & Wilkins(バウワース アンド ウィルキンス)がもとになった。スピーカーコーンに独自のケブラー素材を使用し話題となる。1979年に初代801を発表。あっという間に欧州の主要なレコーディング・スタジオが使用するレファレンス・スピーカーとなった。
1980年代前半、勤め先の洋楽部でもB&W 801を購入した。目的の一つは上記の高域ノイズの監視にあった。ペアーで200万円したから稟議書をまわすのにずいぶん時間がかかった。既に社内はデジタル編集室に1組設置されていた。部内で使用するスピーカーにサーキットブレイカーが付いているのにビックリ。超高域の異常入力でブレイカーが飛んだ記憶が有るから役に立っている。モニター仕様のため、移動に便利なキャスターがスピーカーの四隅に付いていた。キャスターは外して15cm程の台をかまして設置。オフィススペースに置かれたにもかかわらず、前後の表現、エコーの深さ、広がり感、定位の良さにビックリした覚えが有る。
1987年発売されたU2の「Joshua Tree」のCDをオフィスでかけたことがある。U2とスティーブ・リリーホワイトが作り上げたサウンドの重さがB&W 801から伝わってきた。天井につられた横長の蛍光灯が音に合わせてわずかに揺らいでいたことが記憶に残っている。

Joshur_Tree

英国も含めて欧州のスピーカメーカはそれぞれのお国柄、文化の違いを反映しているためか、強い個性で存在を主張する。だからなかなか国を越えたワールドワイドのブランドになれない。しかしB&W 801は英国製スピーカながらそれを一躍グローバルスタンダードにしたのだからすごい。
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801オリジナル

オリジナルは下部にB&WのロゴパネルにLEDが、サイドに移動用のホルダーが取り付けられ、ミッドレンジユニット背面に3段階の切り替えスイッチが2系統ついていましたね。L/Rユニットも近似特性のユニットで構成されていました。

Re: 801オリジナル

貴重な情報有難うございます。もう30年も前のことで記憶がさだかではありませんが、ミッドレンジユニット背面に3段階の切り替えスイッチが2系統ついていたのは覚えています。一番左がナチュラルで、真ん中、右と高域が上がっていったと思います。ナチュラル以外は高域がきついので使わなかったと思います。とにかく左右のスピーカーの特性が揃っているためでしょう、場所を移動しても801はセッティングが楽でした。
B&WのロゴパネルのLEDはアンプからの入力があると点灯する小さなランプではなかったでしょうか。
なにぶんにも90年代後半に制作の現場を離れ、ネットやシステムのほうに職場が変わったため、記憶が薄ぼんやりしています。

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