英国パンク・ロック 40周年について考える(2)

Sex Pistols 003

今年は英国のパンク・ロックが世界に広まってから40年を迎える。1978年1月ジョニー・ロットンが脱退しピストルズが解散するとともにムーブメントは終焉した。以降ニューウエイブと呼ばれ、別位相のムーブメントになる。英国のパンクとは実質的にはピストルズの登場によって勃発した事件だった。
<フアッション>
キングスロードでブティックを営むデザイナー、マルコム・マクラーレン(1946年-2010年)が出入りの若者をデビューさせたのがセックス・ピストルズ。ブティックのパートナーはのちに英国を代表するトップデザイナーとなったヴィヴィアン・ウエストウッド。バンド名は当時の店名「SEX」から取っている。二人がデザインした新しいコステュームに身を包んだピストルズは活動をスタートする。1976年の春にはピストルズのライブは注目の新人の範疇をはるかに超えたセンセーショナルなものとなり、各地のライブにファンが殺到する。

Malcom & Vivienne 003
Vivienne Westwood     Malcolm McLaren
稀代のプロデューサーとしてマルコムは奇抜なアイデアでセンセーショナルな話題を切らさなかった。TV、ラジオ、新聞、タブロイド紙そして音楽紙。ニュースの載らない日はなかった。現在でもめったに見られないメディアミックスを駆使したキャンペーンが続く。反発を受けたピストルズには次々とトラブルが降りかかった。それもまたニュースに取り上げられる。弩濤のパンクムーヴメントを仕掛け、その戦略を世界規模で成功させたのは間違いなくマルコムの功績だ。


<アートワーク>
レコードのパッケージやポスターのアートワーク全てを担当したのはマルコムの美術学校時代の友人ジェイミー・リード(Jamie Reid)。無政府主義を信奉するアナーキスト。セシル・ビートン撮影のエリザベス女王の写真を安全ピンでコラージュした作品は英国のパンクを象徴するものとなった。

Jamie Read
Jamie Read

<ミュージック>
一部の人にはパンク・ロックの録音は素人録音に毛がはえたようなチープなものと思われているようだが、セックス・ピストルズの場合は違う。『英国の音 セックス・ピストルズ「勝手にしやがれ」』で詳しく述べた様に、24トラックをフルに使い、時間と手間をタップリかけて作られたデラックスなスタジオ・アルバム。クリス・トーマスとビル・プライスという当時のトップ・プロデューサー=エンジニアがダブルで付くという破格のキャスティング。音楽的にもチャック・ベリーばりのギター・リフをきかせたロックンロールがベース。それにジョニー・ロットンのコックニー訛りの巻き舌ヴォーカルが一部の隙も無くからむ。パンク・ロックをこの一枚で完結させてしまった歴史的作品となった。

勝手にしやがれ」

<"Punk" はサブカルチャー?>
英国のパンク・ロックとパンク・ムーブメントは若者だけを担い手とするサブカルチャー(「サブカル」)のレベルにとどまらず、カウンターカルチャーの色彩が濃い。ウイッキペディアの定義によれば『既存の文化や体制を否定し、それに敵対する文化をカウンターカルチャーという。』とある。例としては1960年代のヒッピー文化や、1969年のウッドストックに代表される当時のロック音楽があげらている。ベトナム戦争や、中流社会の既成の文化に対する反発が背景にある。
英国のパンクの視点としては、反権威主義、DIY主義があげられる。1976年に財政破綻*した英国は、国際通貨基金(IMF)から融資を受ける。レイオフにより若年失業率が30%を超え、街に行き場のない若者が溢れた。音楽を媒介にして社会にメッセージを訴えるという自然発生的な動きと、ピンク・フロイドやレッド・ツッペリンなどの産業ロックと揶揄される巨大アーチストに席巻された当時の音楽の閉塞感を打ち破ろうという反権威主義の動きがともに強まった。大手のメジャ−でなくとも信念を持って自分たちの音楽をリリースするD.I.Y.(Do It Yourself)の信念も典型的なパンクの視点となった。文化的側面ではアートワーク、ファッションやコスチューム、さらに髪型に至るまでパンク様式が定型化した。音楽的にはベースパートをルート(基音)で弾くというパンク奏法を確立している。
(*戦後の「ゆりかごから墓場まで」の高福祉政策が行き詰まり、国有企業や強固な労働組合などに由来する「英国病」で経済が沈滞。1979年の保守党のサッチャー内閣の登場で英国病は治癒したが、英国の経済が本格的に上向くのは1997年の労働党のブレア内閣になってから。)
 
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